藤枝雅さんの久しぶりの新刊

 漫画 新装版いおの様ファナティクス
 藤枝雅 一迅社 評価6.0(10点満点6点が及第点)
 同人漫画の雄、藤枝雅さんが2004〜2006年に現在は廃刊している「電撃帝王」という雑誌で連載していた、商業初期作品の新装版です。
 もちろん、私は旧版を持っているのですが、今回の目玉は、言うまでもなくドラマCDです。
 主役のいおの様のCVは茅野愛衣、いおの様の母のCVは早見沙織、いおの様の娘のCVは小倉唯。王家の絆を中心に30年に渡る作者の趣味全開の物語が展開されています。
 しかし、作品に対する評価はこの8年で変わる事はありませんでした。その理由は8年前と変わりません。
 「女性だけの王国」「医療の発達による同性同士で生まれる子供」。私は一般論とか社会規範とか語れる人間ではありません。ですが、百合漫画としてこの二つは完全に禁じ手です。
 同性だから社会から批判もされるし、子供も持てない。だけど、愛した人が同性なだけで何が悪い。昔の百合漫画にはこういった基本概念がちゃんとあったはずなのに、そこが完全に抜け落ちています。
 百合姫の前身雑誌、百合乙女が刊行されたのは2003年。百合姫が刊行されたのは2005年。10年掛けて、百合漫画のジャンルを確立した功績は認めます。しかし、多くの人に見てもらうために安易な道を進んでしまった印象を受けます。藤枝雅さんはその中心の一人だったのも事実でしょう。
 新装版の中には、旧版にあったあとがき・カバー裏がカットされているのも地味にキツイ。
 また、改めて読んでみると、設定が雑な部分が妙に目立ちました。
 1.いおの様のフルネームはいおの・ミト・アルシュライン。しかし、いおの様の国はC国と表記されています。アルシュライン王国で良かったのでは?
 2.いおの様の娘ここのはいおのと絵兎の娘ですが、いおの様自身は父親がいた様です。では、C国が女性だけの王国になったのはいつ頃?
 3.いおの様の従者の中でも両翼を担うキャス(CVは洲崎綾)とアイダ(CVは西明日香)は恋人同士の様な印象を受けるのですが、アイダには本国に彼女がいます。洲崎西にして本当に良かったのですか?